ケースバンク

複数モデルの組み合わせによる作業時間予測

AI Questによる課題解決事例(株式会社水上印刷)

  • 製造
  • 手法の考案・改良
  • 業務の効率化

パートナー:水上印刷株式会社

研究者:今中 大・金子 尭史・松尾 典和・伊礼 恭士・田島 慎二郎

研究の概要

背景と課題

  • 製造業における作業時間の予測は、プロジェクトの期間や費用についての正確な見積もりおよびマーケティング活動の最適化に資する。
  • 生産部門における作業時間は、生産作業時間(正味作業時間)とその生産に向けた準備・段取り時間(付帯作業時間)に分けられ、その両方の予測の精緻化と効率化が求められる。
  • パートナーと研究者の協働プロジェクトとしてAI予測モデル構築のナレッジを蓄積することは、実務的・学術的な貢献を果たすと同時に、AI・データサイエンス分野のPBL(Project Based Learning)の1つのモデルとなり得る。

課題解決のプロセス

  • 主体:AI Quest参加者5名と水上印刷(株)ICT部門の協働
  • 期間:2020年12月~2月(約3カ月間)
  • 協働のプロセス
    *すべてオンライン

使用データ

  • 業務実績より得た生産数、加工材料、作業期間(分)、加工仕様、過去の同一仕様の作業実績など。

  • 生産部門で利用している二つのマシン(マシン①:*グルアー、マシン②:印刷機)について、正味作業時間と付帯作業時間の予測を行う。
    *グルアー:印刷物を折りたたんだり、糊付けをして圧着させたりする機械

データ分析

  • LightGBM、CatBoost、XGBoostの3つのモデルを組み合わせた「スタッキング」を採用。
  • スタッキングとはアンサンブル学習の1つであり、単独の学習モデルを用いるのに比べ、特にtrainデータとtestデータの分布が似ている場合に誤差を小さくすることが期待できる。

 

【分析上の工夫】

  • 使用データが人の手によって入力されたものであったため、入力の揺れやルールの変更、異常値などが存在した。そのため、データの成形を慎重に実施した。
  • モデルの解釈可能性を高めることと実運用時の処理時間を短くすることを重視し、モデル精度(≒モデルの複雑さ)より、なるべくシンプルなモデルを心掛け、特徴量選択を意識的に実施した。

成果と提案

  • マシン①について、ひと月あたりの誤差改善が15分/件×作業件数180件/月=45時間 、
    マシン②については、10分/件×作業件数800件/月=135時間が見込まれる。
    これらにより、月あたり180時間の予測精度の改善が期待できる。
  • 特に正味作業時間については従来誤差を大きく下回る予測誤差であった。

AI Quest参加者の声

  • 会社側の持つ課題と、参加者側(≒AI側)の提供できるソリューションがうまくフィットした。特に企業側の持つデータが非常に整っていたこと、データ分析に対する理解があったことなど、AI導入の下地が予め整地化されていたことが、成果を出す鍵であった。
  • 企業側にデータリテラシーがあり、MTGにも多くの方が参加してくださった。また、我々の質問には適切な回答をいただけることが多く、さらに、我々に質問していただくこともあり互いに理解を深められた。

企業からのコメント

・(経営者より)工数の予測精度が上がることで、現場の稼働率をあげることができる。利益を生み出す上で重要な点であり、経営上のインパクトを見込める成果だった。

・(担当者より)AIQuestにお声がけいただいた当初は、AIというワードに対して懐疑的であり、実際に成果が見込めるとも考えていなかった。しかし、実際にAIQuestのメンバーと協同していく中で、当社のビジネスに寄り添っていただいていることを実感した。また、ご提示いただいた特徴量が現場の肌感覚に一致するもので、信頼感がぐっとあがった。最終的に納品いただいた資料とコードは質が高く、当社の環境に即時取り込めるものであった。AIへ対する理解や視座を高めていただく出会いとなり感謝したい。

 

 

※課題解決型AI人材育成「AI Quest」: AI戦略2019に基づく実証事業。
 参加者はAI活用を通した企業の課題解決方法を身に付けるプログラムに参加する。詳細はこちら