ケースバンク

Afterコロナを見据えた地域活性化の切り札

全国を対象とした非訪問型関係人口の実態 -訪問型への移行可能性に着目して-

  • 効果検証・エビデンスの蓄積
  • 持続可能性の追求
  • 計画の策定
  • 計画の見直し
  • 都市計画・建築・不動産

パートナー:国土交通省・国土政策局

研究者:安藤 慎悟(指導教員:谷口 守)

研究の概要

背景と課題

  • 我が国では、近年都市部への人口集中に加えて高齢化に伴い、地方部では地域経済や産業といった地域づくりの担い手不足が深刻化している。この状況を打ち破るべく、移住施策や観光施策によって定住人口や交流人口を増加させる取り組みが各自治体で行われてきた。しかし、共に課題を抱え課題解消には道のりは遠い。そういった中、“関係人口”といった特定の地域や地域の人々と多様かつ継続的に関わる者の存在に注目が現在集まっている。
  •  関係人口は図1のように、活動内に段階性があるとされ階段上で表現されることが多い。そんな中関係人口も、昨今のコロナ禍の影響を受け、地域へ訪れて関わる訪問型関係人口は活動に制約を受けている。一方、訪問を伴わない非訪問型関係人口は、人との対面での接触を伴わないといった点でコロナ禍においてその存在意義が見直され、期待が高まっている

 

図1 関係人口の関わりの階段

  • 訪問型に関しては近頃研究が進み、その全体像が明らかとなってきているが、非訪問型に関してはまず実態が全く明らかとなっていない。その上で、非訪問型は階段をそのまま上がっていく場合もあれば、留まる場合、もしくは下がる(関わりを辞める)場合など、様々なパターンが考えられる。数々の自治体が非訪問型を増やし、アフターコロナの社会において訪問型に繋げていこうといった取り組みが現在見られる中、場合によってはその取り組みが非効率である可能性も十分にある。

そこで本研究では、非訪問型の活動実態の解明とともに、アフターコロナにおける訪問型への移行可能性に関して明らかにすることを目的とする。

 

使用データ

  • 国土交通省がコロナ禍である2020年に実施した「地域との関わりについてのアンケート」を用いる。(国土交通省Webサイトへ
    • 全国を対象とした14万8千人を超えるサンプル ⇒ 網羅性が高い
    • 統計的妥当性を考慮し、居住地の地域区分・性別・年齢の人口構成比に基づきサンプル抽出 ⇒ 信頼性が高い

表1 アンケート調査の概要

 

  • 用語の定義
    • 関係人口:地域や、地域人々と多様に・継続的に関わる者
    • 非訪問型のみ;訪問を伴わない活動のみを行う関係人口
    • 訪問型のみ;訪問を伴う活動のみを行う関係人口
    • マルチ型:訪問を伴う活動も、伴わない活動も両方行う関係人口
    • 無関与型:地域との関わりを持たない者
  • アンケート調査全体の結果と拡大
    • 図2(その1)にアンケート調査の結果を示す
    • 図2(その2)に、その結果を日本全国に拡大した数値を示す
      • 全国で約850万人の非訪問型が存在することが明らかに

 

(その1) 拡大前

(その2) 拡大後

図2 アンケート調査の全体結果

  • 非訪問型の活動別実施割合から、6つの活動の量的関係を整理
    • ふるさと納税が最も多く、クラウドファンディングが最も少ない

図3 非訪問型活動の実施割合

成果と提案

①非訪問型の活動実態

  • 活動者の人物像
    • 6つの活動×個人属性のクロス集計
    • 様々な変数で行ったが、その結果を一部抜粋(図4,5)
    • 年齢や世帯年収によって、各活動間に差があり活動の特性が異なる

 

図4 非訪問型の活動別年齢構成

 

図5 非訪問型の活動別世帯年収

  • OD構成
    • 活動に際して移動を伴うか否かという違いがあるため、OD構成にも差が生まれることが考えられる
    • 乖離度という値を用いて、それぞれ訪問型のみ・マルチ型・非訪問型のみにおける東京都に居住するものがどのような地域と関わっているかを示した
    • 結果、非訪問型は訪問型よりも遠方の地域との関わりが創出されていることがわかった
    • マルチ型に関しては訪問型のみにパターンが似ている

 

図6 乖離度にみる関係人口の目的地選択(東京都発)

 

②地域との関わり方の変化パターン

  • 今回の調査では、コロナ拡大前(2020年2月頃より前)・コロナ禍(調査時点)・コロナ収束後の3時点での地域との関わり方を聴取
  • 全国的なコロナ禍における変化パターンを把握
  • その結果、下記のことが明らかとなった
    • 非訪問型のみの半数の者がコロナ収束後に地域への訪問を意向すること
    • マルチ型と訪問型のみのほとんどの者が関わりを続けたいと回答しているものの、一定数地域との関わりを絶つ者がいること
    • コロナ禍を機に、非訪問型の関わりを持った者が約700万人もいること

 

図7 コロナ禍における地域との関わり方の変化パターン

 

③非訪問型から訪問型への移行可能性

  • 図7の青枠内を対象に、コロナ収束後の意向を目的変数とし、数量化Ⅱ類分析を行った
  • その結果、下記のことが明らかとなった
    • 65歳以上の高齢者は移行可能性が低く、訪問にあたって体力的な要因が影響していると考えられる。
    • 世帯年収が高い者ほど訪問型への移行可能性が高い。非訪問型で地域に関わるよりも、訪問型で関わる方が移動などを伴うため費用を要するため、このような結果となったと考えられる。
    • ふるさと納税を行っている者は訪問型への移行可能性が低い。近年問題視されている返礼品競争に伴う、返礼品目的での利用が多いことが背景として考えられ、利益目的ではない地場産品購入者の移行可能性が高いことがわかった。地場産品購入者は地場産品から地域への興味や愛着が形成され、訪問型を意向していると考えられる。
    • 非訪問型の活動頻度が高い者、関わりの年数が長い者の訪問型への移行可能性が高い。地域との接触回数が一つ移行に際して重要であると考えられ、そうした者にアプローチをしていく、もしくは頻度を高めたり関わりの期間を延ばしたりするように取り組むことが、訪問型への後押しに繋がる。
    • 居住地と関わり先地域の距離が遠い者ほど訪問型への移行可能性が低い。非訪問型は遠方の地域との関わりが創出される一方、訪問型への移行可能性が高いのは距離の近い者であると示された。

 

図8 非訪問型から訪問型への移行可能性に関する数量化Ⅱ類分析の結果(対象:図7の枠内)

 

 

この記事は、下記論文を要約したものです

安藤慎悟(2021)全国を対象とした非訪問型関係人口の実態 -訪問型への移行可能性に着目して-,2020年度筑波大学理工学群社会工学類卒業論文

後記

  • 調査結果が届いたのが中間発表後であったため、残された時間内の中で少しでも価値のある結果を出そうと時間を惜しんで研究に励みました
  • 約15万のサンプルというビッグデータであり、最初は扱うのが難しく、ねらいをつけながら作業していきました
  • 複数種類の地域との関わり方を整理したり、複数の時点で整理したりなど、パターンが多くなるため如何にわかりやすくまとめて他者に伝えるかといった点にも注力しました