都市計画演習

【2021年度7班】ペデを”まるっと”活性化-つくば公園通りへの新モビリティの導入-

班員:松岡あやめ,堀口英里子,児玉駿吾,小松諒治,桑原慶太,三重野馨,角田世羅 (担当教員:和田健太郎,TA:金﨑圭吾)

課題

背景

つくば市中心部は衰退が著しく大規模商業施設の閉店が相次ぐ一方、研究学園周辺は発展しており、そちらへ都市機能が移行しつつある。このように、つくば市の「顔」であるべきはずのつくば駅周辺地域では空洞化が顕著な問題となっている。

とはいえ、つくば駅周辺、特にペデストリアンデッキ(以下、「ペデ」)沿いには魅力ある施設が多い。また、駅周辺においては、様々な中心市街地活性化の取り組みもなされている。


                                                               

【図1】公園通り周辺の主要施設

そこで我々は、ペデの中心部、つくば公園通りに「徒歩のように動けるモビリティ」を導入することで、ペデの特性を有効活用できるのではないかという考えに至った。

 

目的

研究目的は、つくば公園通りにおける新モビリティ導入の提案と効果の検討を行うことである。上述の課題解決には以下の2点を実現する必要があると考えた。

①公園通りの利用を時間的・空間的に点から線にする

②公園通り及びその一帯をつくば市の「顔」とするようなモビリティの導入を行う

 

データ

 ①現地調査

公園通りに我々の想定する自動運転バスを通すことが可能であるかを調べるため、以下の日時に公園通りを自転車で往復し、インフラの整備状況や曜日、時間別の状況調査を行った。

・2021.10/21(水)14:00〜

・2021.10/24(日)13:30〜、21:30〜

 

②パーソントリップ調査

つくば公園通り周辺の移動方法・目的を把握するために、平成30年に行われた東京都市圏パーソントリップ調査(以下、「PT調査」)を用いた分析を行った。PT調査とは、「誰が、何の目的で、どこからどこへ、どのような手段で移動しているのか」を調査したものである。

分析

①現地調査

観察結果は以下の通りである。

・道幅の最小値は2.6mであった。

・つくばセンター周辺は特に整備が進んでいた。

・二の宮公園以南は街路樹が根上がりしている箇所が多く存在した。

・デイズタウン付近には車止め用の柵が設置されていた。

・平日午後は付近の学生の登下校で子供の流れがあった。

・休日のつくばセンター周辺ではイベントによる賑わいがあった。

・公園などの施設利用者は両日ともに比較的多かった。

・主要施設の裏口が公園通りにつながっていた。

 

②パーソントリップ調査

ここでは、つくばセンター周辺と研究学園駅周辺の2地域を訪れる人の代表交通手段と目的を比較することにより、その特徴を分析する。【図2】より、両地域とも自動車の割合が全体のうち多数を占めているが、つくばセンターを訪れる人の代表交通手段は、自動車の割合が比較的小さく、徒歩・バスの割合が大きい。

                         

【図2】両地域を訪れる人の代表交通手段

また、目的施設ごとの交通手段では、公園通り周辺を徒歩で訪れる人は小規模小売店や事務所・会社・銀行、公園・自然地・スポーツ施設等を目的にしていることが分かった。(【図3】)


                   

【図3】つくば公園通り沿いを訪れる人の目的施設別代表交通手段

結果

①現地調査

分析より、公園通りの活性化に向けた取り組みはつくばセンター周辺に集中しており、南側に対する取り組みは少ない、という課題があることが分かった。一方で、その規模やインフラの整備状況から、活用可能なポテンシャルを持っていると言う事もでき、主要施設ごとに点在している人の流れや小さな賑わいをつなぐための役割として、新モビリティ導入の実現可能性は高いと考えられる。

 

②パーソントリップ調査

分析より、つくばセンター周辺をはじめとする公園通り沿いのエリアでは、周辺に徒歩で行ける施設があり近隣地域と比較して徒歩移動が多いことから、自動車に頼らない交通を実現できる可能性を秘めているといえる。

提言

調査・分析の結果を踏まえ、我々は公園通りに新たな交通として自動運転バスを取り入れることを提案する。 我々はこのモビリティ及びサービスを、「ペデストリアンデッキをまるごと活性化させる」という意味を込め、「ペデまる」と名付けた。「ペデまる」は、「電動」「小型」「低速走行」等の特徴を有したグリーンスローモビリティのような形態である 。道幅、人流、コスト等の条件を踏まえサービス内容設計を行った。

モビリティの特徴

車両サイズ

全長 4m

全幅 1.6m

全高 1.8m

定員

7人

速度(サービス速度)

12km/h(10km/h)

 

サービス内容の詳細

我々の提案するサービスについてより具体的なイメージを持ってもらうため、ペデまる利用の際のモデルコースとパンフレット作成を行った4】に「ペデまる」のパンフレット、【図5】に1時間ごとのダイヤを示す。なお、今回のサービスは通勤・通学ではなく日常の偶発的な移動を対象としているため、基本的に9~17時の運行を想定しているが、深夜帯の本数を減らしての運行も検討している。また、現在運行されている研究施設へのシャトルバスの廃止や、目的地周辺施設及びつくば市との協力によってサービスの無料化も可能であると考えている。 

                          【図4】 「ペデまる」パンフレット

【図5】1時間ごとのダイヤと停留所

考察

①アクセシビリティ

以上の提案および現状に基づき、Levinson を参考に、主要施設から移動手段としてバスもしくは「ペデまる」を利用した場合、30分以内に到達可能な範囲を図示して比較することで、「ペデまる」導入によるアクセシビリティの変化を分析した。その際の主要な過程は、以下の通りである。直線距離と道のりの比率が1:1.3であることから、実際の道のりで歩いた場合、同時間では直線距離の(1/1.3=)0.77倍の範囲まで移動可能であると仮定した。歩行速度を80m/min、実際の移動を想定して連続歩行時間を最長10分と設定したうえで、ArcGISによって図示を行った。出発点として選択した主要施設は、つくばセンター、メディカルセンター、二の宮公園、洞峰公園の4地点である。

                        【図6】 つくばセンターを出発点とする場合            【図7】メディカルセンター病院を出発点とする場合

【図6】はつくばセンター、【図7】はメディカルセンター病院を出発点とした場合の到達可能範囲をバス(水色)と「ペデまる」(橙色)で比較したものである。 これらの図より、現状のバスサービスの結節点として機能しているつくばセンター出発の場合は、バスの到達可能範囲の方が広いものの、他の3地点においては「ペデまる」の方が広範囲をカバーできることが分かる。またバスを利用する場合、出発点によって到達可能範囲が大きく異なるが、「ペデまる」では出発点に関わらず広く帯状に到達可能範囲が広がっており、移動の線的な連続性が確保できると言える。以上より「ペデまる」のメリットは以下の3点であると考えられる。

・つくばセンターで移動が区切られることがなく、南北を連続的に移動可能である。

・路線が1つであることから十分な稼働本数が確保され乗車及び乗換等の待ち時間が短縮される。

・停留所の配置が適切であり、公園通り周辺施設へのアクセシビリティが向上する。

バスによって生み出されてきた点状の賑わいが「ペデまる」によって線状に繋がることで、バスと自動運転バスという2つのモビリティ間で補完関係が成立し、公園通りを中心とした回遊性の向上及び賑わい創出に貢献すると考えられる。

 

②外出機会

最後に、従来調査・文献に基づき、「ペデまる」導入による外出頻度や賑わい、ブランディングへの効果について考察する。「第 6 回東京都市圏パーソントリップ調査」(2021)によると、日常の活動及び私事活動において、外出につながる要因には「公共交通の充実」「駅までのアクセス」「施設の充実」が挙げられている。「ペデまる」導入により南北方向の交通の充実、バス停までのアクセス時間の短縮が可能になった。また、それに伴い施設間移動の選択肢の増加も期待できる。以上を踏まえると「ペデまる」は外出の要因として挙げた 3 点を実現するモビリティであり、導入により公園通り周辺住民の外出機会の増加、及びそれに伴う賑わいの増加が見込まれる。また、グリーンスローモビリティの実践事例によれば、街に点在する主要施設や観光スポットをグリーンスローモビリティがつなぐことで話題性や魅力向上、街の新たなシンボルの誕生等、街のブランディング効果が期待できる。従って、「ペデまる」によりつくば市の魅力でもある公園通り及びその周辺施設が一体となることで、つくば市の「顔」としての役割を担っていけると考えられる。

謝辞・参考文献

参考文献

[1] 「近年の歩行者・自転車交通量の推移から考えるつくば中心市街地の現状と課題」,https://www.tutc.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/10/lib_n46.pdf,(2021.11/8最終閲覧)

[2]「つくば中心市街地まちづくりビジョン」,https://www.city.tsukuba.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/005/033/tsukubacenter_vision_soto.pdf,(2021.11/8最終閲覧)

[3]「第6回東京都市圏パーソントリップ調査(平成30年)」,https://www.tokyo-pt.jp/data,(2021.11/8最終閲覧)

[4] 三重野真代・交通エコロジー・モビリティ財団(2021)『グリーンスローモビリティ 小さな低速電動車が公共交通と地域を変える』学芸出版社

[5] Daganzo and Ouyang (2019). Public Transportation Systems. World Scientific.

[6]「自動運転サービスの採算性の検討事例」,https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/automatic-driving/pdf06/02.pdf,(2021.12/6最終閲覧)

[7]「道路政策の質の向上に資する技術研究開発災禍報告レポートNo.21-1」,https://www.mlit.go.jp/road/tech/jigo/h21/pdf/report21-1.pdf,(2021.12/6)

[8]Levinson, David (2020). The 30-Minute City. Transfers Magazine, 1-7.

[9] 森田匡俊・鈴木克哉・奥貫圭一(2014)「日本の主要都市における直線距離と道路距離との比に関する実証的研究」『Theory and Applications of GIS』22(1).pp.1-7.

[10]「第6回東京都市圏パーソントリップ調査 暮らしにおける外出行動の分析の手引き−新たなライフスタイルを支える生活圏に向けて−」,https://www.tokyo-pt.jp/static/hp/file/publicity/seikatuken_1.pdf,(2021.12/13 最終閲覧)

 

謝辞

本演習に際し、以下の方々にヒアリングをご協力頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

東京大学公共政策大学院 交通・観光ユニット 特任准教授 三重野真代様

公益社団法人 日本交通計画協会交通計画研究所 企画室長  三浦清洋様

筑波大学大学院 システム情報系 社会工学域教授      谷口守先生               (順不同)