都市計画演習

【2021年度2班】学生参加による高齢者サロンの持続性と発展可能性

班員:青木 日花, 石川 夏帆, 鎌田 晴人, 酒井 佑, 高橋 慧, 樋口 小波, 平山 裕紀人, 松浦 海斗 (指導教員:川島 宏一, TA:石井 樹)

課題

つくば市周辺部は、中心部よりも人口が減少していることから、交通の便の悪さ、教育・公共施設の少なさ、買い物のしづらさなど多くの問題を抱えている。

中でも高齢者は、特に深刻な問題を抱えている。コロナ禍以前は行われていた、“交流”をする機会が失われているのだ。

そこで本演習では、高齢化率が特に高いつくば市高須賀地区を対象に、高齢者の交流不足を解決することを目指した。

図1. 本演習で対象とするつくば市内の地域とその特徴

 

交流の機会を増やすためには、高齢者の交流会を継続的に開催することが不可欠である。

なお、ここで言う高齢者の交流会は、「高齢者サロン」と称され、健康相談などを通して、高齢者をはじめとする地域住民の交流を活性化させることを目的とした、市役所と社会福祉協議会が主催するイベントである。

本演習では、交流の場としての高齢者サロンを実現させることを目的とした。

そして段階的に目的を設定し、それぞれ仮説を立て、立証をおこなった。

  • 目的①

「交流の場により多くの高齢者が参加するために、学生の効果・役割を明らかにする」

  • 仮説①

「学生が参加することで、高齢者サロンの参加メリットが生まれ、交流の場により多くの高齢者が参加する」

 

  • 目的②

「交流の場に学生が参加するために、野菜をもらえることが効果的な参加インセンティブであるのかを明らかし、実現する」

  • 仮説②

「学生は野菜というインセンティブに影響を受け、サロンに参加するという行動をとる学生が一定数存在する」

データ

仮説①に関するデータ

仮説「学生が参加することで、より多くの高齢者が参加する」を検証するため、11月11日と12月9日の高齢者サロンで参加した高齢者の方を対象にアンケート調査を行った。

・既存研究調査

多世代交流型デイプログラムにおける高齢者の心身の健康の変化を計る事を目的とした亀井らの調査(ⅰ)によると、多世代間で交流をすることは高齢者の孤立を防ぎ、精神的健康に良い影響を与えることがわかっている。

・1回目の調査概要

 調査日時:2021年11月11日

 調査場所:高須賀地区研修センター

 調査対象:参加した高齢者(60代から80代の15名)

 実施方法:お話しながら進めるため、高齢者の方に質問し、回答を我々が書き取る。目的:高齢者サロンに学生が参加することは効果があるのか、高齢者が学生に求めることは何なのかを明らかにする。

center;高齢者アンケート 1

高齢者アンケート 2

図2. 高齢者サロンに対する参加者の満足度当に関するアンケート調査票

 

2回目の調査概要

 調査日時:2021年12月9日

 調査場所:高須賀地区研修センター

 調査対象:参加した高齢者(60代から80代の12名)

 実施方法:11月11日とは違い、今回は班員以外の学生との会話を実施したため、聞き取り調査するように依頼するのは難しいと判断し、すべて紙面に自ら記述してもらった。

 目的:今回のサロンに対する印象や次回以降の参加意思を調査し、高齢者の面から持続可能性を明らかにする。また、参加者の移動にかかるコストを測定する。

高齢者アンケート 1

高齢者アンケート 2

図3. 高齢者サロンに対する参加者の満足度当に関するアンケート調査票②

 

仮説②に関するデータ

仮説「野菜というインセンティブにより学生がサロンに参加する」を検証するため、筑波大学の学群生を対象にアンケート調査を行い、さらに12月9日の高齢者サロンに実際に参加した班員以外の学生9名に対してもアンケートをとった。

学群生対象の調査概要

 調査日時:2021年11月26日~2021年11月29日

 調査対象:筑波大学の学群生6295名

 実施方法:Google formを用いてアンケートを作成し、そのリンクを各班員の知人に依頼して各学群の学年ライングループに提示してもらった。

 目的:野菜がもらえる、アルバイト代が出る、市の施設を一回無料で使える、授業として実施することで単位が出るという4つのインセンティブに対してどの程度反応があるのか、どのような属性   の学生が反応するのかを調査する。

図4. 高齢者サロンに対する筑波大生の参加意欲等に関するアンケート設計構造

 

参加した学生対象の調査概要

 調査日時:2021年12月9日

 調査場所:高須賀地区研修センター

 調査対象:高齢者サロンに実際に参加した班員以外の学生(9名)

 実施方法:紙面に自ら記入してもらった

 目的:サロンに参加した理由や、今後の参加意思を問うことで、学生の面からサロンの継続性を明らかにする。

分析

11月11日の高齢者アンケート

11月11日の高齢者アンケートでは、参加者の基本的な属性のほか、どのような方法でサロンを知ったか、学生に望むことは何かを単純集計した。

12月9日の高齢者アンケート

12月9日の高齢者アンケートでは、参加者の基本的な属性のほか、今回のサロンの満足度や次回以降参加したいかを5段階で質問し、また満足感の理由や次回以降の希望を自由記述で記述してもらった結果を単純集計した。さらに、会場までの移動時間と移動手段も質問した。

学群生対象のアンケート

インセンティブなしの状態で参加したいと思うと回答した学生の割合や、各インセンティブに対して参加したいと回答した学生の割合を集計した。また、参加意思と性別などの属性間にある関係をχ二乗値により独立性検定した。

12月9日の学生参加者アンケート

12月9日のサロンへの満足度や次回以降の参加意思の5段階評価、会場までの交通手段を問い、その結果を単純集計した。参加理由や次回以降の要望も自由記述式で質問した。

結果

結果①

ここでは、仮説①に対して、データの検証で行った高齢者アンケート(11月11日・12月9日実施)の結果を記述する。

高齢者アンケート(11月11日実施)

高齢者サロンの参加者全員にあたる、60代から80代の計15名から回答を得た。

「学生に求めることは何か」という質問に対し、9人が「会話」と答えた。

 図5. 高齢者サロン参加者が期待する参加学生の役割

 

・高齢者アンケート(12月9日実施)

サロンに参加した12名の高齢者から回答を得られた。

参加者の多くが、今回のサロンに満足したと回答した。(12人中11人)

図6. 高齢者サロン参加者が期待する参加学生の役割

さらに、未記入を除いたすべての人が次回も参加したいと回答していることから、高齢者も、次回以降のサロンに高い参加意欲を持っていることが分かった。その理由として、「学生との交流が楽しかった」ことを挙げている人が多かった。

図7. 高齢者サロン参加者の高齢者サロン次回以降参加意欲

 

考察①

この結果と先行研究より、学生がサロンに参加することで、対話を通した世代間交流が生まれ、サロンの次回以降の参加意欲向上につながると考える。

結論①

「学生が参加することで、高齢者サロンでの世代間交流が生れ、健康増進をすることができ、高齢者サロンの参加メリットが生まれるため、交流の場により多くの高齢者が参加する」と言える。

 

 

結果②

ここでは、仮説②に対して、データの検証で行った学生アンケート(11月29日-31日・12月9日実施)の結果を記述する。 

・学生アンケート(11月29日-31日実施)

学類LINEを通じて、筑波大生約6295人にアンケートを配布し、約2.7%にあたる173人から回答を得ることができた。

何もインセンティブを提示しない状態で高齢者サロンに「参加したい」と回答した人は、27人(全体の15.6%)であった。

図8. 高齢者サロンに対する筑波大生の参加意欲(インセンティブなし)

 

最初の質問で「参加したいとは思わない」と回答した146人に対して、

「野菜がもらえる」「アルバイト代が出る」「市の施設を1回無料で利用できる」「授業として行い、単位が出る」という4つのインセンティブのいずれかが加わった場合、参加したいと答えた人は、102人(全体の69.9%)であった。

図9. 高齢者サロンに対する筑波大生の参加意欲(インセンティブあり)

 

さらに、この102人に対して、各インセンティブへの反応を調べた。

すると、「野菜がもらえる」というインセンティブで参加したいと回答した人が50人、「アルバイト代が出る」というインセンティブで参加したいと回答した人が82人、「市の施設を1回無料で利用できる」というインセンティブで参加したいと回答した人が24人、「単位が出る」というインセンティブで参加したいと回答した人が86人であった。

この結果より、何らかインセンティブがあることによって、参加意欲が増すことが分かり、特に野菜では49%の学生が参加すると回答した。

 

学生アンケート(12月9日実施)

サロンに参加した9人の学生から回答が得られた。

「高齢者との交流」「交流を通したまちづくりへの貢献」に魅力を感じてサロンに参加した学生が多いことが分かった。その一方で、野菜というインセンティブを目当てに参加した学生はいなかった。

「次回以降もサロンに参加したいか」という質問に対し、「どちらかといえば参加したい」「参加したい」と答えた学生は、9人中8人であった。この結果から、学生は、次回以降のサロンに対して高い参加意欲を持っていることが分かった。

この結果より、1度参加した学生が継続的に参加したいと思う割合は高く、野菜で来たという学生はいないものの、野菜があるという条件下で行ったため、野菜に効果がなかったとは断言できない。

考察②

学生アンケート(11月29日-31日実施)で、野菜があるなら行きたいと回答した学生が、(インセンティブがあれば参加すると回答した学生のうち)49%いたことから、野菜というインセンティブにある程度の効果はあったと考える。

結論②

「学生は野菜というインセンティブに影響を受け、サロンに参加するという行動をとる学生が一定数存在した」

提言

学生が参加することで、交流の場により多くの高齢者が参加し、参加する学生も野菜というインセンティブに影響を受けて、参加することが分かった。

このことをモデル図に表すと、下の図のようになる。

このモデル図より、市役所が農家に提供を依頼することで、農家から地元の余った野菜の提供が実現され、学生が参加インセンティブとして野菜を受け取ることで、全主体において費用が便益を上回る状態を作り出すことができていることがわかる。

以上のことから、今後の高齢者サロンは、我々が生み出した、持続可能であると考えられる以下の仕組みに基づいて行うべきであると提言する。

高齢者サロンのモデル図

図10. 高齢者サロン関係主体と参加インセンティブの関係性

レファレンス

<参考文献>

ⅰ)亀井智子・糸井和佳・梶井文子・川上千春・長谷川真澄・杉本知子.(2010).

「都市部多世代交流型デイプログラム参加者の12か月間の効果に関する縦断的検証 : Mixed methodsによる高齢者の心の健康と世代間交流の変化に焦点を当てて」『老年介護学』,14(1).

都市部多世代交流型デイプログラム参加者の12か月間の効果に関する縦断的検証 : Mixed methodsによる高齢者の心の健康と世代間交流の変化に焦点を当てて (jst.go.jp)

ⅱ)内閣府. 『平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果(全体版)』.

「第2章 調査結果の概要 4 世代間交流の意向に関する事項」.

平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果(全体版)PDF形式 – 内閣府 (cao.go.jp) (最終閲覧日:2021/12/26)

<調査や高齢者サロンの開催にご協力いただいた方々> 

つくば市役所 福祉部 地域包括支援課 松尾様

つくば社会福祉協議会         大竹様

JA谷田部               関口様・横山様・登坂様・太田様・生産者の方々

高須賀地区              高須賀地区民生委員の方々・地域住民の方々

筑波大学               学生の皆様

ご協力ありがとうございました。