都市計画演習

【2021年度3班】キャンパス交通の未来-バス&自転車連携と定期券の活用‐

班員:櫻井隆之介,山田圭祐,加藤駿弥,早坂遼,森下陽平,佐藤佳乃,真谷健悟,竹内真雄(指導教員:鈴木勉,TA:佐野雅人)

課題

路線バスは、地域の人々の移動手段として重要な役割を果たしている。私たちの身近なところでは、筑波大学循環バスというものが存在する。しかし、循環バスは新型コロナウイルスによる対面授業の減少などの要因から需要の低下がみられる。このままの状況が続けば、バスの減便や路線変更などが行われるだろう。循環バスは、広いキャンパスの移動や駅への移動に便利で、減便や路線変更は日常的に利用している人たちには問題である。

私たちは、キャンパス交通の現状を明らかにし、バス利用の阻害要因を解明して、利便性の向上によるバス利用促進案の提案をすることを目的とする。ここでは、他の交通手段との組み合わせや学生への認知度向上などの効果を検証する。

データ

上記の課題を解決するため、以下の調査を行った。 

1.プレ調査
①アンケート調査
学内バスの利用頻度や区間、バス停までの移動手段、希望するバスサービスの改善策などを明らかにするため、Google Formsを用いてアンケート調査を行った。対象は都市計画演習履修学生及びTAで、32名から回答を得た。

②実地調査
・バス停周りの状況調査
バス停付近における自転車の駐輪状況を確認するために行った。対象のバス停は、「筑波大学循環」の各停留所および第二エリア前、計26か所とした。
・実乗調査
バス利用者のODを調べて需要の多い停留所や区間を明らかにするとともに、バスの遅延や決済方法の実態を把握するために行った。筑波大学循環右回りおよび左回りを対象に、朝・昼・夕方の各時間帯を網羅し、2日間で計6本の便を調査した。

2.本調査
①文献調査
筑波大学における路線バスの利用促進に関する既往研究を参照した。また、バス停まで自転車で行きバスを利用するサイクルアンドバスライドや定期券の活用などの先行事例について調査した。

②ヒアリング調査
学内バスやそれを取り巻く現状を把握し、適切な利用促進策を検討するため、関東鉄道株式会社様と筑波大学総務課に対し、ビデオ会議にてヒアリング調査を行った。
・関東鉄道株式会社様
本学における都市計画分野の研究において度々ご協力いただいており、本演習でもヒアリングさせていただいた。ヒアリングでは、学内における路線バスの利用状況の認識や、バス事業全体における現在の課題、学生のバス利用への要望などを伺った。
・筑波大学総務課
学内バスの定期券「キャンパス交通システム」を管轄しているため、定期券の売上や継続購入の状況などについて伺った。

③アンケート調査
属性ごとのバス利用状況や、利用者のバスへの意識、バス利用の阻害要因を明らかにし、空間データ分析と合わせてバス利用促進策の実現可能性を検証するため、プレ調査と同様にアンケート調査を行った。対象は、筑波大学の学生と教職員で、105名から回答が得られた。

④空間データ分析
サイクルアンドバスライドの需要と効果を予測するため、ドコモ・インサイトマーケティングの「モバイル空間統計」[1]において、2021年4月第3週の人口メッシュデータを利用して、GIS(地理情報システム)上で行った。

分析

1.プレ調査 

②実地調査

・実乗調査 

得られた乗車地と降車地の組み合わせのうち、つくばセンター発着のものとそれ以外のものを分けて分析する。

 

2.本調査 

④空間データ分析

GISの解析機能を用いて、自転車のみを利用する場合と比べて、サイクルアンドバスライドを導入することで、大学周辺の各地点からつくばセンターまでの移動時間がどの程度短縮されるかを分析する。なおこの時、自転車は時速10km、バスは時刻表通りに走ると仮定し、また乗り換え時間はこの時点では考慮しないものとする。以下には、駐輪場をアンケートで設置希望度が高かった4か所と、理論的に効果が最大となる一ノ矢学生宿舎前の計5か所に駐輪場を設置するという条件で分析した結果を示す。

さらに、人口データを用いて、サイクルアンドバスライドの需要がどれだけあるかを調べる。

結果

1.プレ調査 

①アンケート調査

バスを高頻度で利用していた人は、2017年の学生生活実態調査[2]に比べて減少したことが明らかになった。新型コロナウイルスによって、対面授業が減少したためではないかと考えられる。

自転車を持っている人の割合は81.3%であること、自転車を持っている人はバスを利用しない傾向にあることが明らかになった。一方、バス停まで自転車で行く人がいることも明らかになったことから、バス停付近に駐輪場をつくれば利用者の増加が見込めるのではないかと考える。

②実地調査

・バス停周りの状況調査 

バス停付近に停められている自転車は、「大学会館前」、「松見池」、「天久保三丁目」に5台から15台ほど見つかるという結果になった。また、例えば「筑波大学西」では明らかに放置されている自転車も確認されたものの、そのほかのバス停では 停められている自転車はほとんど見つからないという結果になった。

前述の3バス停に自転車が見つかった理由については、大学会館前からは東京行きの高速バスが出発しているためで、松見池と天久保三丁目では、これらのバス停からバスに乗っているためなのではないかと考えられる。

・実乗調査

つくばセンターを発着する利用については、「一ノ矢学生宿舎前」を境に乗車・降車の数が大きく変わるという結果になった。ほとんどの人は、遠回りにならないようなバスに乗っているものと考えられる。

つくばセンターを発着しない利用が全体に占める割合は18.4%と分かった。その中でも特に多かったのは、左回りに「追越宿舎東」、「天久保二丁目」から乗車し、大学構内のバス停で降車する利用と明らかになった。

 

2.本調査 

①文献調査

平成29年度学生生活実態調査[2]では、筑波大学における通学時の交通手段は自転車が最多となっているため、大学周辺に住む学生は通学以外の移動でも自転車を多く利用していると考えられる。よって、自転車の利便性を活かしながら、路線バスと連携させることが有効であるとみられる。ここで、自転車とバスを連携させて円滑な移動を実現する手段として、サイクルアンドバスライドが挙げられる。栃木県小山市の「おーバス」は、バス停付近の商業施設や公共施設が駐輪場を提供し、利用申請をした利用者のみが駐輪できるという仕組みを採用している[3]。このような取り組みを学内に応用することで、学内バスの利用促進と放置自転車の抑制が図られ、安全で快適な学内交通システムを構築できると考えられる。

筑波大学内の路線バスは、2005年の運行開始と同時に定期券の販売を開始した。石田・谷口(2007)[4]によると、定期券保有者は、非保有者に比べて頻繁にバスでつくばセンターを訪れていた。この既往研究から、定期券の購入を訴えることで利用促進が図られると考えられ、本演習でも定期券利用に着目することとした。

②ヒアリング調査 

定期券の販売・売り上げの実態やバスの課題、学生へ期待することなどを伺った。バスサービスの充実だけでは利用客の増加に限界があるので、主に筑波大学在籍者の需要や選好を調査した上で、柔軟な改善策を検討する意義があると考えられる。その手段として駐輪場整備によるサイクルアンドバスライド促進や定期券販売促進の可能性と課題も示唆された。

③アンケート調査

サイクルアンドバスライドが実施されると仮定して、それに対する満足度やどこに駐輪場が欲しいかを聞いたところ、「平砂学生宿舎前」、「筑波大学西」、「松美池」、「天久保三丁目」に駐輪場の設置希望度が高いという結果になった。 

定期券を購入していない人に対して、その理由を聞いたところ、「ほかの交通手段のほうが便利と感じるため」を多く選ぶことが明らかになった。そのため、バスの利用促進を図るには、バスの魅力向上、利便性向上が必要になってくるものと考えられる。 

④空間データ分析 

図1:CBR効果検証(駐輪場を5つのバス停に設置)

図2:CBR需要予測(駐輪場を5つのバス停に設置)

移動時間短縮効果の程度を図1に、短縮時間とその影響を受ける人口の関係を図2に示した。現在の大学循環バスが平日の日中では20分間隔で走っていることを踏まえると、10分以上の短縮効果がある地域で導入効果があると考えられる。

そこで10分以上の効果がある地域に着目すると、図1における橙・赤色の地域、すなわち一ノ矢学生宿舎付近が該当すると分かった。特に15分以上と短縮効果が高い地域は、図1中の赤色の地域が該当するという結果になった。図2によれば、10分以上効果がある地域の夜間人口は約7000人、そのうち15分以上効果がある地域の夜間人口は約2350人だと分かった。

提言

これまでの分析・考察から、我々3班として以下の2つのバス利用促進策を提案する。 

①バス停付近に駐輪場を設置する 

アンケート調査でCBRの需要が高かった平砂学生宿舎前・筑波大学西・松美池・天久保三丁目、およびGISによる分析の結果移動時間短縮効果の高かった一ノ矢学生宿舎前の計5か所のバス停に駐輪場を設置する。これにより、CBRの実現・促進につながり、筑波大周辺の住民の移動時間短縮効果が見込める。 

図3:駐輪場設置のイメージ図

②定期券購入を促進する 

 バス利用の促進のため、より多くの人にバスに乗るきっかけを持ってもらうことが必要である。そこで、定期券の購入を促進する。具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられる。 

・定期券購入者にIcycle(筑波大学の自転車管理システム)のICタグを無料で交付する 

 →ICタグの料金2000円が浮き、バス利用者が自然と自転車も利用するようになる。 

・定期券のお得さやCBRの利便性を宣伝する 

 →フレッシュマンセミナーの授業内で紹介してもらう、バス停に定期券の広告を出 

・TXとの連絡定期券を作る 

 →アンケートではTX利用時のバス利用が多かったため、TXの定期券や回数券とセットにして販売する 

参考文献

[1]ドコモ・インサイトマーケティング:モバイル空間統計茨城県500mメッシュ, 2021.

[2]筑波大学:平成29年度学生生活実態調査(学群)報告書, pp. 54-57, 2017, 最終閲覧2022.1.19.

https://www.tsukuba.ac.jp/campuslife/support-lifesurvey/2017undergrad.pdf

[3] 小山市:「サイクルアンドバスライド」, 小山市コミュニティバスおーバス, 最終閲覧2021.12.16.

https://www.city.oyama.tochigi.jp/site/o-bus/216591.html

[4] 石田東生・谷口綾子:筑波大学「新学内バス」の導入とその効果, 筑波フォーラム 76 号, pp.93-98, 2007,最終閲覧2022.1.19.

https://core.ac.uk/download/pdf/56633335.pdf

[5] 宇都宮市:バス停付近の駐輪場(サイクル・アンド・バスライド用駐輪場), 最終閲覧2022.1.19.

https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kurashi/kotsu/jitensha/1014230.html